カイゼン・サミット2017 in 福山
平成29年2月18日(土) 午前10時から午後4時30分まで、広島県福山市生涯学習プラザ「まなびの館ローズコム」において、7回目となる「カイゼン・サミット」を開催しました。
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目的と全国大会とのつながり
概要
1 開会
2 講演&ワーク
3 グループディスカッション1
4 昼食・カイゼンクイズ
5 静岡県の事例紹介
6 静岡県富士市の事例紹介
7 グループディスカッション2
目的と全国大会とのつながり
改善運動のプロセスを共有し、各自治体がよりうまく改善の運動や活動を進められるよう、対話を通じて課題やヒントを見出すことを目的に、「カイゼン・サミット」は2011年から毎年行っています。
「カイゼン・サミット」は、毎年「全国都市改善改革実践事例発表会」の翌日に開催しており、全国大会は全国各地の改善優良事例が集結する改善事例共有の場であり、改善に本気で楽しむ職員の熱い思いに直接触れることができる場となっています。
前日の全国大会により高まった改善意識を、「カイゼン・サミット」で共有し、伝え合うことでさらに増幅し、この2つのイベントの相乗効果により、自分の職場のみならず全国自治体の改善活動の弾みをつける場でもあります。
7回目となる本年度は、広島県福山市にて約80人の参加により行いました。
その概要や様子をお伝えします。
概要
1 開会
(1) 全体司会進行
さいたま市桜区市役所 野島氏
(2)実行委員長あいさつ
東京都中野区役所 酒井氏
・カイゼン・サミットは今年7回目
・全国大会の翌日に行なっている
・サミット参加の皆さんはカイゼン運動事務局担当が多いと思う
・良い発表事例をどう組織で実行に繋げられるか、このカイゼン・サミット参加の皆さんに改善運動のプロセスを共有し、各自治体がよりうまく改善運動・改善活動が進められるよう切磋琢磨する場
・グループディスカッションなどを通じ、裏側の話、組織の話をみんなでしましょう
・話を聞くだけでなく、語り合う時間もたくさんあります
・今日は1日よろしくお願いします
2 講演&ワーク
「よりよい役所へ! 改善をステップアップ ~自治体改善マネジメント研究会から」
講師:㈱スコラ・コンサルト 行政経営デザイナー/ 自治体改善マネジメント研究会代表 元吉 由紀子氏
(1)自治体改善研究の経過
・自治体経営を変える改善運動研究会メンバーからこの活動はスタート
・トップからの意見、担当からの意見などを研究した結果を自治体学会で平成14年発表した
・研究内容を「地方を元気にする自治体経営を変える改善運動」と本にした
(2)改善の役割
・改善は何のためにやっているか、ここをおさえることが重要
1) 改善とPDCAサイクル
・改善はPDCAサイクルのどの部分か?
・Actionである(PDCにもつながってはいるが)
・改善をやることが目的ではない、必ず生みの親に帰る
・Pから出発してAで最初に戻す
・現場でDoをしながら生まれてくる
・元々のPとつながっているように思えない
・改善はPから出発し、Pを進化させていくもの
2) 思いがけない改善が生まれることもある
・業務改善を行なっていたと思ったら、施策改善、組織改革になることもある
・違うPが生まれそうな時は、どこのレベルになっているか確認する必要がある、最初の指示を受けた課長に戻すのではなく部長が担うべき内容か、首長が考えるべき内容か見極める必要がある
3) いい市役所づくりのための5つの改善
・組織のレベルに応じた改善のやり方がある
・「業務改善」、「事業改善」、「職場改善」、「施策改善」、「戦略提案」、「人材育成」
・Pのランクの違いをしっかり見分ける
(3)自治体の改善取組み事例
1) さいたま市の事例
・全職員1改善を実施
・部長は部長の改善、課長は課長の改善、改善運動を仕切る担当者の力量も要する
・改善の器によって、それぞれのレベルの職員が対応する
2) 横浜市の例
・ハマリバ収穫祭
・部長自主研発表会
・部長改善を首長に見てもらう場
・今自分たちの自治体はどのレベルで行なっているか、確認する
・筋違いにならないように
(4)改善と改革
・改善は改革から始まる
・改善=より良くなる
・ポイント 何が良いか何をすべきかの判断基準が必要
・新しい首長がくると、前首長の判断基準がガラッと変わることがある
・改革という方向を示すものがあって、それを示されて改善を行う
・保育園の改善と民営化
・自前で改善するのか、民営化して改善していくのか
(5)改善のレベルとタイミング
・経営改革の進捗に応じて、改善を進めていく
・ステップアップ
・トップダウンの改革推進
・管理部門が方向性を作る人たちが動き始め、組織の方向性を示す
・組織として方向性を示せるようになったら、トップダウンとボトムアップにより、全体で取り組む
・全職員でやってはいけない時期と、全職員で一斉に取り組む時期を見極める
・地域と役所の協働により新しい地域価値を創出する
・必要に応じて経営システムを再構築する
(6)行政経営ツール
・多くの自治体で、制度や行政経営ツールを取り入れ取組んでいるが
・行政評価、人事評価は当初目的を果たしているか
・手段だけで目的に沿った評価になっているか
・仕組みを関連付け、トップの思いとつなげていく
(7)改善を生み出す力
・改善は小さなことから始められる
・改善の方向性も改革自体と変わっていく
・改善を生み出す力がどこにつながっているか、「課長も苦労しているんだな」と思い悲観しない
(8)自治体改善マネジメント研究会
・現在参加18団体23人
・月刊ガバナンスで連載中「いい役所をつくろう!」
・同じく月刊ガバナンスで「後藤式 地域に飛び出す公務員ライフ」を連載中の山形市 後藤さんが参加しているので紹介
・ワーク・ライフ・コミュニティ バランス
・公務員も仕事以外の活動を仕事に活かしてほしい
(9)自治体改善ステップアップシート
・自治体改善ステップアップシート(簡易版)をやってみましょう
1) 自分自身について
・自分の担当業務の目標が明確になっているか
・自分の能力開発・向上に絶えず取り組んでいるか
・人材育成=何を育成するか?
・人材を育成する4つの視点
・理解力、気力、能力、行動力
・やる気がいないのか、やる意味がないと思っているのか
・頭で認識していても、自分には関係ないと思っていないか
・本人の働きがいになってないか
・「できないを言いたくがないためにやらない」とならないように、恥をかかないでできる力をつける
・やろうと思っても、タイミングが合わないとずれる、成果が生まれない
・行動力も大切な育成力
2) あなたの職場について
・現場に出向いて課題に向き合う
・三遊間のゴロを拾いあえる組織になっているか
・今ある担当業務の先に何が起こるか未来視点で上司が考えているか
・職場のコミュニケーションをよくする=風通し良くというが、風向きはどちらにするか
・明るい職場 どこにスポット、明かりをあてるのか
・あいさつしているか 誰にあいさつしているか
・コミュニケーションの質を見分ける 知っている?価値を生む
・目指すものを共有する
・今誰とどんなコミュニケーションレベルにあるか、確認してみて
・職場全体でどんな使命を持っているか、どんな職場になりたいか
・業績を果たす、どんな施策を担っているかは話すことはあるかもしれないが
・良い職場になりたいと思っていても、どんな職場が良い職場か話し合っているか
・いい仕事、いい人材を生む土壌はいい職場にある
3) 市役所全体について
・リーダーシップ ビジョンの実現に向け
・スポンサーシップ メンバーを主役にするための脇役になる
・首長と職員が自分たちのめざす地域像を共有しているか
・目指す街の姿を共有できているか
・実現を判断基準にして仕事をしているか
・経営の軸合わせができているか
・軸合わせができていると、改善も楽に進められる
・管理職同士が協力し合っているか
・仕事の優先順位を示しているか
・部門を超えた問題には、総合調整する部署が機能しているか
3 グループディスカッション1
・ジブンガタリともやもやトーク
・今自分がどんな改善に取り組んでいますか
・抱えている悩みは?
・カイゼンジブンガタリ
・自分が意見交換で聞きたいステージレベルはどこか「役所改善」、「職場改善」、「自分改善」の3つに午後のディスカッションに向けグループ分け
4 昼食・カイゼンクイズ
・カイゼン・サミット恒例、クイズタイム
・改善に関するクイズや、開催市の福山市にちなんだクイズをしながら、プチ知識を学びました。
5 事例紹介1
「静岡県と県内市区町村の改善取組み状況」
静岡県 経営管理部行政改革課/早稲田大学パブリックサービス研究所招聘研究員 中山 雄二氏
(1)はじめに
・取り組み事例
・「大井川の回転道路」
・右折が来るたび渋滞が発生
・静岡県の改善運動
・ひとり1改善運動
・職員一人一人が身近な業務を見直して、
(2)静岡県のこれまでの取組み経緯
・平成6年頃、新しい知事が赴任 生産性向上を 頭使ってよく考え、お金がかからないサービスを取り組むように
・平成13年頃までは、提案件数が多かった
・提案されても対応できない案件が多くなってきた
・改革成果報告にシフト
・平成21年に知事の交代、今に至る
・知事は変わったが、改革改善運動は継続
・件数は1万5千件/年
・職員一人当たり190件/年
・量を質に
・恥ずかしがらずに、どんどんやることで質の高い改善が出て来る
・富士山の裾野から頂上と同じ
・取り組み件数と効果
・自己申告額も成果を見るため、報告時に想定効果額を入れている
(3)取り組みのコツ
1) 褒める
・知事以下、幹部職員が出席して報告会を行い知事から表彰
・寸劇などはなく、真面目に
・一般公開で行なっている
・表彰状授与、庁内ポスター、庁内LAN
2) 仕事を作らない
・実践したら即入力
・内容は簡単に
3) マネ大歓迎
・データベースで全職員が
・私たちも実施 1万件 オリジナル少ない
4) マンネリ打破
・テーマ別推進月間実施
・各部局から全庁的に推進したいテーマを募り、推進月間を実施
(4)さらなるコツと取り組み
・日本HR協会[創意と工夫]より「世の中の課題には『~ない』、『~にくい』しかない これを解決するのが改善」
・「やめる」「減らす」「変える」を合言葉
・真似る 褒める
・改善なので、著作権不要
・「なんで今までやらなかった」は禁句
・どんなことがあっても変えたことを褒める
(5)DASサイクル
1) 実施 まずやる【Do】
・なるべく簡単なことから
・静岡県の行革の柱 施策展開表=行政の作戦書 1年間の仕事の目的や達成目標 これをできるために、改善に取り組む
2) 見える化 【Appear】
・見えないのはやっていないと同じ
3) 共有化 【Share】
・データベースのボタン一つで「私たちも実施」
・インセンティブ
・やったことは褒める
・人事評価にも反映
(6)改善の輪を広げる
1) 共有化
・市町村にやらないか、声かけ、お節介
・19年度にシンポジウム開催、書籍も発行
・県内市町村の改善改革運動を件は把握
・民間企業からの助言
・表彰式の事例審査
2) 行政経営研究会
・県と市町村で行政
・公民連携
・ファシリティマネジメント などの部会構成
・共同事例発表などを実施
3) 県内市の取り組み
・改善提案件数とその内容を把握
・浜松市、藤枝市、湖西市、富士市などが積極的に取り組んでいる
・かつて、県では浜松市に改善講演に出向き、改善運動を進めた
6 事例紹介2
「静岡県富士市の改善運動?新たなステージへのはじまり」
静岡県富士市行政経営課 主幹/ 自治体改善マネジメント研究会研究員吉野 貴雄氏
(1)はじめに
・改善運動の継続の難しさはどの自治体でも抱えているのでは
・一部の職員だけの盛り上がりで終わってしまっていないか
・経験を踏まえて、どう改善を行っていけば良いか、富士市の事例を踏まえお話させていただく
・ブランドメッセージ「いただきへの、はじまり 富士市」
・海と富士山を市域に持つ唯一の都市
(2)これまでの経緯
1) 種まき
・平成16年度 改善運動スタート
・行政経営課主導で約170グループでスタート
・改善運動の名称「cha cha cha運動」(chance、challenge、change)
・コンセプト:あらゆる機会をとらえとことん挑戦し変わっていこう!
・当時改善運動は少なく、尼崎市、名古屋市、福岡市
・全国的にも早い方の活動だった
2) 芽吹き
・発表会を行っていた
・部長推薦により年度末グランプリを目指し発表
・蒔いた種が芽吹いてきた
・地元ラジオ局で改善活動を発表
・改善活動を事務事業評価と連動
・数値目標を意識した業務改善運動
・課題克服のために、連動
・評価シートには、
・具体的にどういう改善を行うのか明記
3) 開花
・富士市の業務改善運動の大きな特徴
・「cha cha cha運動」とPDCAサイクルと融合
・行政経営の推進エンジンの一つ
・持続的に成長し続ける市役所を目指す
・総務省HPや雑誌に紹介された
・第一回山形市の全国実践事例発表会にも出場
・参加自治体のうち、継続している自治体があるか
・継続することの難しさ
4) 黒い影
・改善運動に黒い影が…
・迷走時代に突入
・20年度 市町村合併準備のため中止
・21年度 「cha cha cha運動」自体取りやめ
・担当者が変わって、一回中止となった後の復活の難しさ
・23年度 昔からあった事務改善提案制度の見直し
・審査方法の見直し 各課審査→経営会議審査
・24年度 提案方法の簡素化
(3)再興
・26年度 新たな改善スタイルを模索
・事務改善制度 改善報告、フリー提案、テーマ提案、ヒヤリハット
・27年度 カイゼンチャレンジ富士(カイチャレ)
・一人1改善
・27年度1130、28年1434件 8割の職員から提出あり
・なぜ増えたか?→市長のリーダーシップ
・市長のつぶやきで提案件数の数にこだわることを職員に伝えた
(4)改善を進める上での課題
1) 改善意識の醸成
・一部で盛り上がって終わっていないか
2) 改善の目的
・なんのために行なっているかを明確に
・総合計画や人材育成方針など行政経営ツールに明記すべき
・酒田市副市長の言葉 「改善は人づくり」
3) 管理職の責任
・課長職が改善を自分ごととしてとらえているか
・自分は関係ない、若手のサポートする役だと考えているか
(5)継続する力
・人事異動や首長交代しても継続できる仕組みが大事
1) 改善意識の醸成
・カイチャレSAT創設
・手挙げ方式で1期生が現在活動中
・活動内容
・改善の報告提案
・情報収集
・プロモーション
・交流研修
・改善診断、理想の市役所づくりなどツールづくり
2) 改善の目的
・理想のまち実現につなげる
・いただきへの、「カイチャレ」
(6)今後の展開
・1人1改善のリニューアル
・課長職の自分ごと化
・個人、組織、まちと理想を実現させていく改善のループ
・市民協働
・1人1改善と地方分権改革のリンクさせたい
7 グループディスカッション2
・ミライガタリとチャレンジ宣言&全体共有
・他自治体の事例を通じての感想、明日から何をやるかについて
・一人ひとりの決意表明
・まとめ、グループ発表など
(1)全体共有
1) 「自分改善」グループより
(ア) 貝塚市
・チームメンバーの向いている方向は合っているのか
・誰かがやってくれる、方向性を示してくれると思っている人もいる
・やる気になってやる職員もいれば、自分の役割を限定してやろうとしない、向いている方向が違う
・やる人が損をすると思われている
・首長はどこを向いているか、課はどこを向けばいいのか
・上が方向性を示さないので、係はどこを向けばいいのか悩んでいる
(イ) 茅ヶ崎市
・60人の職場で、今日は課長と話しをしなかったという職員もいる
・月に一回課内会議を行って、必ず課長に課員に向けて喋ってもらう
・やっていることや考えていることを直接職員に喋ってもらう
・共通言語が必要
2) 「職場改善」グループより
(ア) 大分市
・職場も個人で構成されているので、連携することで問題解決能力が高まる
・お互い認め合うことが大切
・1 視点を変える
・後輩教育について悩んでいた
・時間と距離を置いて考えてみると、相手の行為は変えられないが、自分の考え方は変えることができることを知った
・後輩を育てているのではなく、自分は育てられていると視点を変える
・2 物事にゲーム性を持つ
・何か問題が発生した時、将棋や「ドラクエ」のように考えて対処する、気分を変える
・決めつけるのではなく、それぞれの特性にあった役割を担ってもらう
3) 「役所改善」グループより
(ア) 札幌市
・業務改善運動をやっているが、成果が出ていない
・問題解決力を高める組織するにはどうすればいいか
(イ) 横浜市
・「ハマリバ収穫祭」実施
・各区役所で改革推進委員会が目標を持って改善に取り組んできている
・改革推進委員会を部局ごとに組織しており、部局の運営方針をもって組織全体に落としこんで改善を進めている
・以前は、「エンジンルーム」が調整のうえ、都市経営戦略会議や執行会議で市政の重要課題を議論しており、現在は、政策局政策課が調整のうえ、経営会議・調整会議で市政の重要課題を議論している
・課長級職員による横断チームが、肩書きを外して諮問委員会的にテーマをあげて検討している
8 閉会・記念撮影など
最後に参加者全員で記念撮影です。
終了後は、福山市の皆さんのおもてなしにより、有志で懇親会を行いました。
会場は、福山城敷地内です。