みなさま、はじめまして。
三重県南伊勢町の小山と申します。
自治体改善リレートークということでお声がけをいただきましたので、当町の取組みを紹介させていただきます。
【南伊勢町の行政経営改革の取組み】
南伊勢町の改善取組みをお話する前に、本町の行政経営改革の取組みについてお話させていただきます。
南伊勢町の改善・改革の取組みは、今の町長が就任してから一つ一つ経営改革の進捗に併せてステップアップして進めてきましたが、その目的は、価値観やニーズの多様化など社会環境が多様化する中で、社会の変化に対応できるまちづくりを役場が自らができるようになるため、変化に対応できる役場組織の経営体質を作っていくことにありました。
【行政経営改革のはじまり・価値観の共有と方針づくり】
そのために、まずは町政刷新委員会で、町民や外部有識者の方とともに、共有すべき価値観から作り直しました。その価値観は、総合計画の基本構想へ生かされています。
また、総合計画を基本構想から作り変える期間からでも、方針にもとづく経営は必要なことから、平成22年度から町長経営方針をしめし、「課長経営方針をまずはつくってみる」というところから始めてきました。
【業務改善のはじまり】
一方で、南伊勢町の改善の取組みは、自治体改善マネジメント研究会さんの本にもあるように、身近な町民に接するサービス場面での改善と言うところからスタートしました。今できているサービスを「サービス基準」として設定し徹底するとともに、新たに取組む目標を「サービス向上目標」としてチャレンジし、一年の中で振り返り、出来るようになったものを新たなサービス基準として落とし込むというものです。
それは、まずは職員研修という形で、考えるプロセスを通じ、形をつくりあげてきました。
とはいえ、このような取り組みが、額面どおりにすぐには進みません。
研修という形で考え方を学ぶとともに、実践が必要ですが、プロジェクトチームで考えたチャレンジ活動が、課の中に落とし込まれるには、目標の共有や課長のスポンサーシップが必要です。ただ、そういう行動をとる組織風土はまだ十分ではありませんでした。
【サービス向上取組 チャレンジ発表会】
「プロジェクトメンバーのみの発表会」
まずは、サービス向上取り組みのチャレンジ活動発表会として改善発表会はスタートしました。このころは、パワーポイントを使って発表することすら大半の職員がしたことがない時代でした。発表に慣れるというところから始めた感があります。そのころ事務局は30㎞以上離れた二つの庁舎で各課の、パワーポイントの作成支援に、一つ一つ対応し、発表の不安感を払しょくすることに努めました。そして、発表はプロジェクトメンバーのみ。まずは、発表するというところから始めました。
そして、目標設定についても共有の発表会を行っています。課長が課員が立てた目標を共有して、スポンサーになってもらう、結果の発表会で課員の頑張りを称えるということを、「やってもらう」ということを通じて習慣化していきました。
この当時、司会は事務局が行い、各課のプロジェクトリーダーは言われるままに発表会を行っていたので、何のためにこんな事をするのだとか、こんなことが必要なのか、ふざけすぎていないかと言う声がありました。
しかし、今ふり返ると、いまのEGK改善発表会にはそのような声は貴下なくなりました。(以前は、直接そのような声を聞いていました)。発表会自体を慣れるという意味では必要な期間だったかもしれません。
そして、この発表会の結果、発表者は改善自体に十分な自信を持ったわけではなかったですが、目標設定やチャレンジ活動として取組んだ活動が、他の課へ波及し、全庁的なサービスが向上するきっかけになりました。
【EGK改善発表会】
「役場全体で、“知り合う”、“称えあう”、“次へ活かす”発表会」へ
実行委員会活動を通じての若手職員の成長の場と、行政経営システムを職員へ浸透させる場へ。
平成22年度からスタートしたサービス向上取組で改善活動はスタートしておりましたが、一方で、総合計画が平成23年度末にできましたが、同時進行で平成23年度には施策と予算事業とつなぐということがされていました。
そして平成24年度には施策と予算と評価をつなぐ事務事業管理の仕組みを構築したことから、平成25年度にはマネジメントの仕組みを再構築し、総合計画のもとに経営方針と事務事業管理、サービス向上のそれぞれの取組みを行政経営システムのもとつなげると言うことにしました。
仕組み上、経営方針と事務事業管理、サービス向上が統合したとしても、それが一人ひとりの行動に落とし込まれていかなければ仕方がないことから、平成25年度には行政経営システム運営会議がスタートし、課長同士の情報共有や相互学習の場として運用しはじめました。
そして、経営方針の振り返りは、中間や期末に町長ヒアリングと言う形で行われていましたが、経営方針というものを一般職員まで落とし込むこと、経営方針をもとに事業の推進や業務の改善、サービスの向上がされるということを実感するために、前年度までのサービス向上チャレンジ活動発表会を拡大した、役場全体での経営方針をもとにした「事業推進」、「業務プロセスの改善改革の取組み」、「職場の活性化と人材育成」を一体とした発表会として、行政経営システム運営改善発表会(通称:EGK改善発表会)を行うということになりました。
この改善発表会の立ち上げまでのプロセスでは、全課長で構成する行政経営システム運営会議の場で開催が決定しました。その際には、まだまだ意図は分かるが十分な発表ができるレベルではないというような声もありましたが、もともとの趣旨が「経営方針で課長が目標を立てて取り組んでいる項目のふり返りの場」であり何らか取組んでいるはずであること、役場職員で取組みを共有することやがんばってチャレンジした事は称えることが大切ということで、一度やって来年度どうするかはまたふり返って考えようということでスタートしました。
そこで発表会の運営については、やってもらえる職員を公募することにしました。ただ、単にグループウエアで公募しても誰も手をあげませんから、若手から順に1人1人声がけをし、行政経営の仕組みが知れる、課を越えた職員同士の交流の機会となれるというように必要性を説明し、それで自分に少しでもメリットがあるなら参加してほしいと呼びかけました。
正直、最初の動機は私にコーヒーをおごってもらったからとか他がやるからと言うことも多かったですが、結果的に動機と目標を共有して取組んでもらったことから、最終的に良かった楽しかったと言うことがきこえる結果になりました。
発表会自体は、各課から経営方針をもとに3つの部門毎に1事例づつエントリーし、どの部門で発表するかは課長同士の話し合いで決めることとしました。15の課(現在は17課)が3つの部門にバランスよく分かれるようにしてもらいました。これは、経営方針の取組みが「事業推進」、「業務プロセスの改善改革の取組み」、「職場の活性化と人材育成」に分かれており、それぞれの取り組みが一体として取組まれてこそ、経営方針をもとに課のめざす姿が実現されるということで、各課の優秀事例の横展開も意識して分けてもらいました。
また、3つの部門に分かれたことで、内部管理部門でも「業務プロセスの改善改革の取組」や「職場の活性化と人材育成」でエントリーできるなど、全ての課が発表するとしてもできるだろうということになりました。
結果的に、発表会は、「役場全体で、“知り合う”、“称えあう”、“次へ活かす”発表会」というコンセプト、enjoy(良いことを)、good(楽しんで)、keep(続けていこう)という趣旨の実行委員会自身が付けたEGK改善発表会(良い行政経営の発表会)と言う名称とそれを実現するためのアイデアとがんばりのおかげで、「よい発表会だった、来年度も続けて欲しい」という声になるようになりました。
この発表会をはじめるにあたって、町民まで参観を呼びかけるかと言う議論になりました。まだまだ、町民の方に聞いていただくには早いと言う声や「役場全体で、“知り合う”、“称えあう”、“次へ活かす”発表会」というコンセプトでしたので、まずは役場職員に知ってもらうことが先だと言う声がありました。そのため、EGK改善発表会では、町民の方へ広く呼びかけると言うことはせず、CATVなどで結果をお知らせするということにしました。
ただし、議会にはこのような取組みがあるということを事前に伝えておこうと言うこと、近隣の自治体の職員で興味のある方なら内部の範囲内だから呼びかけても良いだろうということになりました。
そして他の自治体の職員が来ていただいたらコメントをいただこうとしました。称えあう発表会というコンセプトですので良い感想があつまりますし、職員の自信にも繋がったと思います。また、議員さんからもこう言う良い取り組みはもっと町民にも知ってもらったほうがいいという感想などもあり、後押ししてもらうような状況がでてきました。
【合併10周年記念事業 ~人と組織の成長、成長を通じた仕事の成果をまちぐるみで実感する発表会へ~】
今年度、南伊勢町は合併10周年を迎えました。
発表会の事例の中でも儲かる漁業の取組みなど町民と取組みを共有したい取組の事例もでてくるようになりました。
合併10周年の取組みの中でも、各団体が10周年記念事業のめざす姿を共有したうえで、各団体同士がコラボして取組みが行なわれたり、そこへ役場職員も1人の担い手として参画するように、役場の仕事の仕方もかわってきました。
合併10周年記念事業は、実施方針の基本姿勢で「お互いを知る機会」「一体となって進めていく機会」・・・「これからのまちづくりに向けての契機」など5つの基本方針を、10周年記念事業推進委員から示してもらいましたが、このコンセプトの大もとにあるのが、「実感できるまちづくり」「町民とともに考えともに取組む役場」という総合計画の基本姿勢であり、最初の「価値観の共有」が個々の取組みの中に落とし込まれてきた感がでてきました。
今年度、色々な団体が合併10周年の取組みやそれ以外の取組みで活躍してきました。その中で役場の関わり方もこの10年の変化のなかで変わってきたのではと感じるようなこともでてきました。
そこで、今年役場では合併10周年記念事業として、役場の取組の発表を通じて、人と組織の成長、成長を通じた仕事の成果をまちぐるみで実感する発表会を開催することになりました。
南伊勢町の改善発表会は行政経営の振り返りという位置づけですので、通常のEGK改善発表会は今年も2月18日に役場内部で全課が発表し行います。
今年は、合併10周年ということで更に、その中から優秀事例を数点程度、町民とともに共有する発表会を行おうと取組んでいます。その中で、役場の仕事の仕方や、まちづくりの変化を町民とともに実感し、役場の取組みを知ってもらうことで、共に取組みたいという機運が生まれ、実感できるまちづくりが肌感覚できればと考えています。
実行委員は通常のEGK改善発表会と10周年の発表会と二つの発表会の企画に現在がんばっていただいており、やるからには良かったと思えるものをしたいとがんばっていただいております。
10周年の発表会は3月27日(日)に南伊勢町町民文化会館で10周年の締めのイベントとして開催する予定でいます。詳細が決まればこちらでもPRさせていただきたいと思いますが、25日には春日井市で全国自治体改善改革実践事例発表会、26日にカイゼン・サミットがあるということですが、少し足を延ばして美味しい海の幸を堪能すると思い27日の南伊勢町もお越しいただければ幸いです。
あと、今回10周年の発表会をすると町長から聞いたときには、もう一つステップが上がるのかと驚きました。ただ、将来的にはそのような姿も必要と思っていましたし、仕事の仕方も変わってきたと思えるようなこともでてきたので、タイミングとしては今だったのかもしれません。
実際現場の声としては、まずは、必要性は理解できるが、経営方針の振り返りとして役場のなかでしっかりやるべきだとか、町民さんの満足の得れる発表会になるのかという声もありましたが、10年の中での成長と成果を知ってもらおうということで開催することになりました。
また、今回もまた、少し高いめざす姿が示され、目標に向ってチャレンジすることになりました。
長々と書いてしまいましたが、このように当町の改善の取組みは経営改革の進捗に併せて一歩一歩、少し高い階段を上るようにすすんできました。そして今もチャレンジしており、更に今後は、目標と行動が職員一人一人の行動レベルにまで落とし込まれるのが目標です。
経営の進捗にあわせての南伊勢町の取組の変化が、他のメンバーの方へ少しでも参考になれば幸いです。まだまだ、改善のプロセスとプロセスをつなげる取組み書ききれませんが、また、何かの機会発信できればと思います。