NPO法人 自治体改善マネジメント研究会

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書籍読者感想

2016.02.17

自治体経営を変える 改善運動

【読者投稿035】 静岡県富士市監査委員事務局主幹 吉野貴雄さん

「自治体経営を変える改善運動」に寄せて

「なぜ、業務改善運動が求められるの?」
もし、あなたが、このような質問をされたら、どのように答えますか?

業務改善運動の担当者であれば、一般の人よりはその知識もありますし、実際に経験もされているので、簡単に答えることができるかもしれません。

でも、その回答が、みんな同じ答えであるかというと、それは違うのではないかと思います。業務改善運動の目的や、始めるに至った経緯などが、それぞれの自治体で異なるはずだからです。

現在、業務改善運動に取り組んでいる自治体の影には、業務改善運動をやめてしまった自治体が数多くあります。私の所属するまちも、取り組む形式を変えましたが、その中の一つになります。

やめてしまうには、それぞれの自治体に理由があると思うのですが、元気に業務改善運動に取り組む自治体の姿を見ると、どこかさみしさを感じます。

そのような中、再び業務改善運動に取り組む自治体が見られるようになったのは、とても喜ばしいことです。
各々の都市で業務改善運動の目的が違うように、復活の処方箋は自治体独自で異なり、一つではないのかもしれませんね。

この本は、業務改善運動に現在、取り組んでいる方々、これから取り組もうとしている方々、そして復活させたいと思っている方々には、課題や進め方などが、とてもよく整理されている良書であると思います。
また、自治体職員が実際に執筆されていて、より身近な視点で業務改善運動の意義が描かれているのが、とても良いです。

この本を通して、今まで気づかなかった何か大事なものに、気づけるといいですね。

静岡県富士市監査委員事務局 主幹 吉野 貴雄

2015.11.15

自治体経営を変える 改善運動

【読者投稿034】 金井壽宏さん(神戸大学大学院経営学研究科教授・現代経営学研究所(RIAM)所長)

マネジメントという言葉は、「管理」とか「経営管理」と訳されることが多い。後者だと、組織体全体の理念や戦略という方向づけにかかわる経営と連動したマネジメントを連想できなくもないが、「管理」という言葉だけを聞くと、ネガティブな響きもある。管理と聞いて、わくわくするひとはいない(経営とか、よき戦略とか、ビ
ジョンとかを、経営者やリーダーから聞くと、わくわくすることがあるのと対照的だ)。

 マネジメントの標準的定義は、「<こと>を成し遂げてもらうこと(getting things done through others)」という無味乾燥なもので、この言葉から夢を感じることはむつかしい。みなに成し遂げもらう<こと>が、ビジョンだったり、戦略だったり、リーダーの熱き想いというように表現されれば、ぐっとリーダーシップに近づくが、管理のイメージは、粛々ときちんとものごとが成し遂げられるという側に傾斜している。

「リーダーシップ」と「マネジメント」の対比は、学問的にも実践的にも、二分法によくある誤解に満ち溢れているが、実際に実践しているひとが、この両者をどう感じて、どのように実践し、どのような状態をそれぞれに対して理想としているか、議論するのがよいだろう。多少ギスギスしても、破天荒であっても、変革を起こすリ
ーダーシップ、粛々ときちんとものごとが進捗されているマネジメント—どちらも大事で、一方を<いいもん>、他方を<わるもん>にする筋合いのものではない。

その機微を、実際の経験や観察に基づいて理解してもらうために、これまでに出会ったひとのなかからで、「すごいリーダー」に該当すると思うひとと、「できるマネジャー」に当てはまると思うひとを、ひとりずつ実際に接したことのある人物から選んでもらう。
それから、それぞれの人物がフォロワーたちと接している場面を、できる限り、具体的に描いてもらう。そこで出てきたキーワードを、もし議論の場にホワイトボードなり黒板なりがあれば、そこに、対比しながら記していくと、わたしたちが、日常の実践のなかで、どういう具体的な行動、発言、発想法にリーダーシップという言葉を
連想しているか、対照的な姿がある程度、具体的に把握できる。

行政学では、法律による行政という考え方を学ぶが、こちらは、きちんとしていないと困るという部分、どちらかというと行政組織の管理(マネジメント)の側面を照射する。しかし、変革が求められるのは、産業社会の企業のような組織ばかりではない。『地方を元気にする、自治体経営を変える改善運動』というこの書籍のタイトルにあるように、実際に自治体でそのような運動に従事されてきた異なる6自治体の職員の経験を、自治体改善マネジメント研究会代表の元吉さんがまとめられたこの著作では、行政組織に求められている変革とリーダーシップのあり方が述べられている。自治体に限らず、企業や他の組織体における組織変革や組織開発、経営改善について、その理解を深めたい実践家と研究者の双方にお読みいただきたい。
金井壽宏

2015.06.13

自治体経営を変える 改善運動

【読者投稿031】 美濃加茂市土木課長補佐兼総務係長 山口 登督さん

こうあったらいいな!という内容が満載です。
でも、「思い」だけでは意味を為しません。実行・行動につなげましょう!

 現状に違和感を持ち、企画、総務、人事などで行政経営に携わったことがある方なら「人」が全てと必ず気づくと思います。
ところが言葉遊びが得意な行政(要は破たん、倒産が事実上ないため、覚悟が足らない・・・自分を含め)にとって「行(財)政改革」という言葉は自分が行政に入る随分前から定期、不定期に計画が作られ、実行する「人」にスポットをあてることなく進められ、内容すら達成されたかの分析、検証もあいまいなまま、また新たな改革がスタートしています。

 「計画」をつくればそれで終わりといった風潮により、PDCAサイクルが十分に回ることがない行政において、言葉遊びが絶えないのも無理がありません。

 なら、どうするか!を気付かせてくれる一冊です。

 事務分掌として担当するだけの職員にとって法的縛りのない行革は、トップや上司の顔色を伺うだけで、総合計画や行革、そしてカイゼン運動の進捗管理をしてるだけで仕事をしてる気になっています。最終的視点が「自分」なんですね。

 一方で、熱意ある担当職員は、住民視点、納税者視点、企業視点など「社会的視点」の重要性と「行政の役割」を考え、最大の経営資源である“職員”にスポットを当て組織力を高める手立てを考えます。

 こんな職員がいる自治体は小さくても未来が見える幸せな自治体であるとともに、活動をフォローできるトップ、上司、仲間のいる組織風土の熟成が「民主的にして能率的な行政の確保を図るとともに、地方公共団体の健全な発達を保障すること」(「地方自治法第1条目的」抜粋)を達成する組織としてスパイラルアップさせ、働く職員の「やる気」を引き出してワークライフを充実させてくれるのではないでしょうか。

 他自治体の担当者自らがペンを持って書かれた内容は評論家とは違う視点で書かれています。
組織風土改革を柱とする自分にとって本書は自分の思いの代弁とも言える内容です。

 地方創生を進める中、「自治体経営を変える改善運動」(自治体改善マネジメント研究会代表 スコラ・コンサルト株式会社 元吉由紀子 編著 「東洋経済」)が公私とも熱い全国の同志の拠り所となり、気付きを与えてくれる一冊であることをお伝えして感想とさせていただきます。

2015.06.11

自治体経営を変える 改善運動

【読者投稿030】 人吉市総務課長 溝口 尚也さん

「この本はきっと貴方のかゆいところに手が届くはず」

 自治体職員が「貴方の組織に改革改善は必要ですか?」と尋ねられたら、おそらく十中八九の方は「必要」と答えられることでしょう。
「では、貴方は何か改革改善をやってますか?」と尋ねられて、胸を張って「やってます!」と答えられる人は、おそらくほとんどおられないのではないでしょうか。

 もし、おられるとしたら、その方にはこの本は必要はありません。

 大半の方は、途端に歯切れ悪くなったり、あるいはムッとして押し黙ってしまう。
または、自分がやることではないからと「問い」をかわしてしまう・・のではないかと思います。

 ただ、そんな貴方でも、もし・・・。
これでよいのか?このままでいいのか?何とか変えたい。変わりたい。
では、何をどうすればいいの?どうあればいいの?それがわからない。
ムズムズ、モンモン、イライラする・・のであれば。
それは貴方が、「傍観者」から「当事者」になろうとされている証拠ではないかと。
素直な心の反応ではないかと思われます。

 そんな貴方への「処方箋」として、私は、この本をおススメします。

 実は、私も今、とてもかゆいのです。
環境が変わったからなのか。自分の体質が変わったからなのか。
わからないけれど、ムズムズ、モンモンと、もどかしい。
けれども、五十肩の影響か、本当にかゆいところに手が届きません。
やれやれと困りはてていた矢先。この本が手元にありました。
今では、この本を孫の手のようにそば近くに置き、たびたびページを開いては、かゆいところを掻いてやらないとおかしくなりそうです。そんな私だからこそ断言します。

 この本は、きっと貴方のかゆいところに手が届くはずです。

 なぜならば、この本には理論やお題目はありません。
実践を通じてしか得られない成功例や失敗例。そこから生まれた知見や知恵、ノウハウ。
そして、なにより。代表著者の元吉氏をはじめ執筆者のみなさん方が積み上げてこられた実践の中からしか感じとることができない生の感情や思いがたくさん詰まっています。

 それらを自分たちに当てはめていくと、今、何が課題問題なのか?今、自分たちはどの段階にいるのか?改革改善をすすめるプロセスにそって、自分たちの立ち位置がどこなのか?が、とてもわかりやすく見えてきて、そして、ストンと腑に落ちる。

 また、それをすぐにたぐりよせられるように、各章の小見出しも見やすく、わかりやすく。
さらには、ページ上方の見やすい位置に、それぞれの段落のリードコメントがついています。
だから、「あ、ここだな!」とかゆいところにすぐにたどり着く。そんな工夫もされています。
なので。

 この本は、そもそも自分のかゆいところがどこかわからないという方に、特におススメです。

「あ、ここだ・・」とヒットしたときの得も言われぬ快感。その効用は、読んでみなければわからない。
この続きは実際に手にとられ、ページを開いてみてのお楽しみということで。

2015.06.04

自治体経営を変える 改善運動

【読者投稿029】 戦略広報アドバイザー・経営改革プロデューサー 川部 重臣さん

「自治体経営を変える改善運動」の横浜市の事例を読んで考えさせられたこと。

横浜市の取組で中田市長の時代のゴミ減量化目標や林市長の保育所入所待機児童ゼロ目標など、敢えて高い目標を掲げたことについて。

数値目標というものは大抵5%アップなどを設定するが、その場合は「今までの方法で頑張れば達成できる」と考えてしまうが、50%や100%アップという高い目標を掲げた時には、「今までの方法では達成出来ない」と受け止めて、抜本的に「どうすれば達成出来るか」を考えることが必要になる。

外資系企業ではストレッチな数値目標設定の意味を、そのように積極的に 意味付けている。

外資系カーディーラーの社長から、瀕死の巨大量販店ダイエーと経験してきた林市長のマネジメントには、そのような意図があったのではないか。

もともと横浜市は革新市長の旗手として輝いていた五十嵐市長や飛鳥田市長や都市計画の田村明さんなど、先端的な行政経営の伝統がある。

全国の自治体の中でも横浜市の職員には、そのようなDNAが秘められているのではないか。

つねに革新するという横浜市役所職員の誇りを広報が再確認して、プライドを醸成していくという、

職員向け庁内広報が求められているのではないか。

2015.06.03

自治体経営を変える 改善運動

【読者投稿028】 中野区能力開発担当係長 佐藤 加奈さん

本書で紹介されている自治体の取組み事例のひとつに、東京・中野区の「おもてなし運動」があります。

 中野区では12年前に、顧客満足度向上の運動が始まり、堅苦しい言葉のままであれば、いつまでも浸透しないとの配慮もあってか、「おもてなし運動」という名前がつけられたのでした。それは運動の狼煙があがって、どれぐらい経った頃でしょうか。おもてなし推進員の初代リーダーの職員が、漫画「美味しんぼ」の中でこの言葉を発見したから命名したというエピソードを発表会で披瀝したのを何となく記憶しています。
しかしそれがある意味、禍を呼んだのかもしれません。口になじみやすい、ひらがな言葉が持つ運命か、当時たくさん立ち上がった庁内のシステムの中でも、「おもてなし運動」は最大の嫌われ者になりました。「おもてなし」は禁句であり、それゆえ、おもてなし推進委員なることをほとんどの職員は固辞する。何もわからない新任の職員をまるであて職のように任命し、委員会に送り込んだ部署もあったかもしれません。それでも、運動は途切れることなく、それこそ今も愚直に続いています。

 そんな中で、奇特なことに、おもてなし推進委員に買って出た人もわずかにいました。それは本当に稀有な存在で、上述の環境の中にあっては、「変人」と呼ばれことも必至でした。
本書の筆者である酒井直人氏は運動の黎明期からずっとこの運動に携わっていて、それゆえ筋金入りの「変人」として、庁内に深く認知されることになったのです。
とはいえ、石の上にも12年。今回、一流の出版社が全国に向けて発売する本書に、その名を刻み、知名度に拍車をかけたわけですから、酒井氏の戦術とそのたゆまない努力には本当に頭が下がる思いです。

 運動の効用は明々白々で、何よりも職員の区民への対応力は格段に良くなりました。先日、某自治体にいち市民として問合せをしたところ、非常に不快な経験をしましたが、たぶん相手が中野区職員だったら、こんなことにはならなかったと即座に思ったものです。

 「おもてなし運動」をさらに浸透させるにはどうすればいいのか、カイゼンのレベルに引き上げるにはどうするのか、課題はまだまだあります。現在、職員の人材育成を職務とする中、本書を精読し、他の自治体の取組みからもヒントを得ていきたいと思いました。

2015.05.24

自治体経営を変える 改善運動

【読者投稿027】 神戸市行政経営課 中道 眞さん

元吉さんの新著、「地方が元気になる 自治体経営を変える改善運動」ですが、まず表紙が良いですね。思わず手に取ってみたくなります。
もしかしたら、心地よい表紙から興味を持って読んでみようと思う職員もいるかもと思って、職場のデスクに、人の目につくように常に表紙を上にして置いています。(笑)

「公務員」という立場は、きちんとできて当たり前。もしひとたび何か問題が起こればマスコミ、議会、市民からバッシングの嵐。だから、コンプライアンスの徹底が求められ、その行動様式は、目の前にあることを言われたとおりにきっちりとこなすことになりがちです。
特に、当市の場合は、阪神淡路大震災以降の復興の取り組みの中でそれらの風当たりがより強かったということと、財政健全化するための取り組みを20年間続けてきた中で基本的に削減・縮小といった方向で行動せざるを得なかったことから、結果として個々の職員が、自律的に考え、行動するということができにくくなっているように感じます。

でも、個々の職員は、私を含めて、本来は地域のために貢献したいという「熱い想い」を秘めているはずです。
その潜在的に持っている想いを、カイゼン運動を通じて顕在化させることができれば、働く私たち職員自身にとっても、限られた人的資源の中で市民サービスを向上させるために効率的に業務を行うことが求められる組織にとっても、そして何よりもサービスを受ける市民にとっても、HAPPYなことだと思います。

この本は、読んだらカイゼンの取り組みに取り掛かりたくなるのではないでしょうか。
カイゼンという高度に知的な楽しみを、じわじわと浸透させるための仕掛けをどうすればよいか、紹介していただいた先行する他都市の事例を参考に考えたいと思います。それぞれの事例は、当事者の筆によるだけに臨場感と説得力がありました。すべてが順風ではなく、今も試行錯誤の中で取り組んでいるということに、リアリティを感じました。

他都市での取り組みを大手を振ってパクりあう(笑)。むしろどうぞ参考にしてくださいという姿勢で共有しあうことができる。これは、「公務員」であることの強みだと思います。
その強みをいかして、当市においても、試行錯誤しながら神戸らしいスタイルを作り上げていく必要があると考えています。
いつの日か、カイゼンサミットや、全国改善改革実践事例発表会に、当市からも自信をもって参加できるように、まずは種まきをしていきたいな、と思っています。

素晴らしい本を、素晴らしいタイミングで届けていただき、ありがとうございました。
この本が、自治体の幹部を含めた多くの職員の手に渡り、改善運動が、爆発的に浸透するきっかけになることを祈っております。

2015.05.22

自治体経営を変える 改善運動

【読者投稿026】 川崎市総務局人材育成課 湯澤 康治さん

  • 今まで、改善、改革、革新という言葉をごちゃまぜに使っていました。各々の意味がはっきりしたことによって、進めるためのポイント等が分かった気がします。
  • 複数の自治体の取組、経過等が赤裸々に記載されており、自らの自治体の取組と似ているところもあれば、そうでないところもあり今後の検討において真似すべき点、気をつける点等参考になりました。特に横浜市や福岡市は発表会や改善運動推進の方法等が首長の影響等を受けて、流れが変わった部分の記載がしっかりしてあり、通り一遍の他都市照会では聞けない貴重な内容になっているようと思いました。
  • 首長、管理職、係長の役割、そうした部分の記載もあるのも非常に実践的に感じました。個人的な感想ではありますが、これ以上の量的削減が困難になりつつある自治体の行政運営において、とても“使える本”“改善運動に迷ったら読み返すべき”本なのではと思いました。
  • もっともっと色んな感想があるのですが、まだ2回程度しか読んでません。10回くらい読んだら、もう少しまとまった感想が書けると思いますので、その際はまた連絡させていただきます。

※ 上記は、FBにメッセージをお寄せいただいたものをご本人の了承を得て掲載させていただきました。

2015.05.01

自治体経営を変える 改善運動

【読者投稿025】 合同会社経営合宿研究所 森田 元さん

少子高齢化が進む中にあって、地方行政の効率化とそれを支える地方自治体の 活性化は益々重要になっている。しかし、「お役所を変える」のはそう簡単ではない。

 長く公共性の高い事業を行う企業で働いてきた私は、公共サービスに携わっているという高邁な使命感が、市民感覚から遊離する遠因になっていたり、また国の方針通りやっていれば最後は国が面倒みてくれるだろうという親方日の丸的潜在意識が改革を困難にしていることを感じてきた。

 本書は、そういう難しい構造のなかで、どのように改善に取り組んでいけばよいのかを、実際に取り組んでいる事例紹介を交えつつ、たいへん実践的なノウハウが得られるように解説している良書である。

 本書を読んで、改革と改善の違いについても、改めて考えさせられた。
大胆な改革というのは、ハード的な施策が中心になるが、ハード的改革は、メンテナンスをしっかりやって行かないと本当の意味で定着しない。
そう考えてみると、改革を定着させるには、改善がしっかりやれる組織風土になっていることは、ある意味必須要件であるとも言える。

 本書は、国政、地方行政のみならず、公共性の強い事業に携わっている方々にもお勧めしたい「使える本」である。

合同会社経営合宿研究所 代表社員 森田 元
http://www.diamond.co.jp/book/9784478007297.html

2015.05.01

自治体経営を変える 改善運動

【読者投稿024】 株式会社フューチャーセッションズ 代表取締役 野村 恭彦さん

「自分ゴトのイノベーション」

 元吉由紀子さんの編著した「自治体経営を変える改善運動」を読んだ。

 まず目を引いたのが、「改善と改革の違い」。改善はボトムアップだけど、改革はトップダウンでやらされ感が強い、という。私はイノベーションを促進することが仕事なので、どちらかと言うと「改革派」を自認していたので、痛いところを突かれた。同時に、「なるほど、確かに」と膝を打った。

 この本は元吉さんのほかに、6人の自治体職員が自らの体験を執筆をしている。そして、皆さん口を揃えて、「改善は楽しい」「改善を一過性に終わらせない」ということを語っている。その対極として、「改革はやらされ感がある」「改革は一過性で終わりやすい」という。

 読み進めるうちに、「自分は改革派ではないかも」と気づいた。この本で言うところの「改善」と「改革」は、「自分ゴトの変化」と「他人ゴトの変化」という分け方なのだと理解したからだ。つまり、「改善」or「イノベーション」という対比ではなく、「自分ゴトのイノベーション」or「他人ゴトのイノベーション」の対比なのである。そう思って見直してみると、元吉さんたちの書いている「改善運動」は、「想いを持った人が主体的にアクションを起こす」という意味で、まさにフューチャーセッションそのものであった。

 日本は現場からの改善が強みだが、欧米のようなトップダウンの変革が弱い、とよく言われる。しかし、それは「理想のビジョンを示して他人を動かす」ことよりも、「いま・ここでを大切にして日々少しでもより良く生きる」ことを私たちが選んでいるということなのだ。それが、元吉さんたちが誇りをもって「改善運動」を謳っていることの意味である。

 これからの日本に、「改革の苦手感」など不要である。「自分ゴトの変化を得意とする希有な国民」という自負をもち、「自分ゴトのイノベーション」を次々と起こしていけばよい。そんなエールを受け取れる一冊である。

 株式会社フューチャーセッションズ 代表取締役 野村 恭彦
https://www.facebook.com/takahiko.nomura?fref=nf&pnref=story

2015.04.29

自治体経営を変える 改善運動

【読者投稿022】 諫早市 村川 美詠さん

元吉様、「改善本」拝読させていただきました。

 それぞれにうまくいっていること、そうでもないことが素直に書かれていて、共感ポイントがたくさんありました。

 特に、最近おつきあいをさせていただいている(笑)福岡市さんに対しては、このような土壌があってのあの職員さん方なのだと、改めて尊敬と感謝の気持ちでいっぱいになりました。

 個人的には、過去に職員提案制度で担当者としても提案者としても心が折れてしまった経験があり、正直やる気を失っていましたが、昨年の福岡の「カイゼンサミット」に参加させてもらって、
「なにかやれそうかも!」という気持ちになりました。1年前に、福岡市の「明日晴れるかな」をTTPして「おこしの会」というオフサイトミーティングを立ち上げましたが、その活動の中で、少しずつですが、職員の気持ちを“おこす”こともできてきているので、今後は、この本を参考にさせていただきながら、まずは「地中期」から「萌芽期」へ移行できるようがんばってみたいと思います。

 元吉様をはじめ、このような本を出版されるまでに、自分の仕事以外で関わっておられるK-NETの皆様方にも感謝です。

2015.04.26

自治体経営を変える 改善運動

【読者投稿019】 福岡市 今村 寛さん

元吉さんから「地方が元気になる自治体経営を変える改善運動」のレビューを書くように言われてましたが、なかなか時間が取れず、今のタイミングになってしまいました(^_^メ)

 みなさんのレビューと重なるので、目新しいことは特に書きませんが、読後の感想としては、全国で改善改革を志す自治体職員がこんなにもタテヨコナナメにつながって、ネットワークが張り巡らされていること自体を大変心強く感じており、こういう本が出版されることも、この「自治会改善の輪」がグループ化され、活発に情報交換、情報共有が行われることも、自分自身の改善改革の力になるものだと改めて感じました。

 私自身、福岡市役所では職務外の副業として「明日晴れるかな」というオフサイトミーティングを3年前から継続的に開催しており、本業の財政調整課長としては「財政出前講座」で各職場を同じく3年前から回らせていただいています。
この取り組みはいずれも、明確な方向性を持たずに勢いで始めたもので、こんなに続くとも、こんなところにたどり着くとも思っていなかったものですが、市役所内外のたくさんの仲間たちに支えられ、温かく見守っていただき、励まされ、参加していただいて、今日までたどり着いています。

この場でつながりを持たせていただくみなさんからまた力をいただいて、また、私自身もみなさんの力になれるよう、この場での情報発信、交換、共有を進めさせていただければと思います。

みなさん、よろしくお願いいたします<m(__)m>

2015.04.25

自治体経営を変える 改善運動

【読者投稿018】 流山市副市長 石原 重雄さん

自治体改善マネジメント研究会代表
元吉 由紀子 様

 拝啓 春暖の候、ますますご健勝のほどお喜び申し上げます。
この度は「自治体経営を変える改善運動」のご出版、誠におめでとうございます。
自治体経営に携わる身として、日頃より非常に関心の高い分野であり興味深く、早々に拝読させていただきました。
課題の整理や自治体の事例を含め、やわらかい文章で非常に読みやすく、早々に読み終えることができました。
本書にあるように、改善と改革の違いを理解し、気づきを得るべく首長や幹部職員、現場職員との対話を通じた行動の積み重ねが、自治体経営における改善ではないか。また、物事の本質を理解し、職員一人ひとりが自分事としてとらえることが何より大事だと考えます。
合わせて、物事を進めるにあたり、得てしてそのPDCAサイクルにおいては、結果も去ることながら、そのプロセスを大事にして次へつなげていく。そこに改善の意義があろうかと思います。
本書はそれらをまとめた正に自治体経営を変える改善のための指南書であると存じます。
自治体経営は不断の努力が求められます。
今後、流山市発展のために何ができるか。そのためにどのような改善が必要か。その改善の輪を如何に普及啓発するか。その一方で気づきを得るきっかけづくりや環境づくりを行っていくことが自治体経営を行う自らの使命であると考えております。
地方分権時代、前例踏襲から脱した自治体経営を行うべく本書の内容を常に心に留め、日々改善の気づきを得られるよう、幹部職員以下、職員にも本書を購読させ、今後流山市政の発展の手引きとして活用させていただきたいと思います。
このような素晴らしい書物に触れる機会を与えてくださったこと、心より感謝申し上げます。
今後ますますのご健勝とご活躍の祈念申し上げます。
敬具
2015年4月吉日

2015.04.20

自治体経営を変える 改善運動

【読者投稿016】 スコラ・コンサルト相談役 金田 秀治さん

■本書は「半歩先行く本」である

 昔、出版社の社長と話をしているとき、次のような指摘があった。
『本という商品は一歩先行く話では、そんな先の話には興味がないと読者に買ってもらえない。 しかしすでに世の中によく知られるようになったテーマでは、そんな内容は分かっていると判断され、これも買ってもらえない。 結局、本という商品で売れるのは「半歩」先を述べている本が売れるんです。』

 それでは、果たして本書は半歩先行く本であるかと言えば、この種の本(自治体経営)で言えば、まさに半歩先行く本だと言える。

■「自治体経営」の「改善運動」

 「改善」活動には、2種類の展開型が存在する。
一つには「問題解決型」であり「目標値の達成型」である。
今一つの展開型は「ありたい姿チャレンジ型」であり「目標値近づけ型」である。 この「ありたい姿チャレンジ型」は「日本型イノベーション」とも呼ばれている。

 日本型の特色は「半歩」でもありたい姿に近づけば「ワクワク」してくる活動である。 本のタイトルが改善「活動」ではなくて改善「運動」となっているのは、日本型の半歩先行く自治体のありたい姿をでさせて「ワクワク」してくる「運動」であることによる。

■問題の視える化=現地現物で気づく

 トヨタグループの一社に勤めていたころの話である。
名古屋から大手の部品メーカーの社長が久しぶりにおみえになった。
たまたま、部長が不在であり、次長の私がお相手した。 そこで次のような話が出た。

 社長「いやぁ、金田さん、トヨタには驚きましたよ」
金田「何かあったのですか?」
社長「先日、トヨタの新入社員の当社担当になった方がお見えになって、工場を見せてほしいと言われるので、私が案内しました。 見て回って社長室に戻って、感想を求めると、こう言われたのです。
『お宅の工場は人も多いし、在庫も多いですね。』 これには驚きました。
学校を卒業して、おそらく初めて工場を見た人が、よく工場の実態を押さえられていると!」

 私はこの話を次のように理解した。
おそらく会社を出る際に、先輩の購買マンから「工場を見たら、こう言え」と言われたに違いない。そして、この工場見学を通してこの新入社員は「現地・現物」で気づく工場の見方(視える化)を覚えたに違いないと思った。

 「在庫」と「人」という着眼点があることで、工場の実態を見ることが可能になる。ムダや問題の視える化につながるのである。
この本の読者は、工場のトヨタにとっての「在庫」と「人」のように、自治体経営の改善の見方(問題の視える化)が提示されていると感じられるはずである。

■「改善」の進まないダメ工場

 昔、大野耐一さんが工場の視察中には一言の発言もなく、帰り際に一言「在庫が多過ぎる」と言った。
この一言で工場長の顔色が変わった。
「在庫」が多いとは、何を意味するかと言えば「問題点(ムダ)」を在庫がカバーして見えなくしてしまうことである。したがって、「改善が進まないダメ工場」ということになる。

 自治体経営においてムダとは何か。
ムダが見えなくなっていないか。
改善を進める前に、ムダに気づくことが必要だ。

■全員参加の改善活動世界一工場

 ものづくりの工場では、世界一と呼ばれていた米国が、1970年代に入ると敗戦国・日本に生産性で負ける状態に落ち込んだ。
驚いた米国は数多くの視察団を日本の製造業の現場に送り込んだ。

 私のいた工場にも数多くの視察団が訪れた。 その視察団の一つで、次のようなことがあった。

 工場を見学し会議室に戻り、ディスカッションの始まりに、視察団のリーダーが私から一言言っておきたいと発言があった。
「私の工場では、何か問題が生じて改善しなければならないとき、その処置をするIE(インダストリアルエンジニア)マンはわずかしかいない。 しかし今日この工場で確認したら、この工場での改善マンは1500人、全員であるという話であった。 全員が「仕事=作業+改善」で、日々改善活動をしていると言う。 これで米国が日本に生産性で負けた理由がはっきりした。 米国は日本の「改善のしくみ」に負けたのだ。」

 この半歩先への「改善のしくみ(筆者が言う『改善運動』)」が機能すれば、日本の自治体経営は世界一のレベルが期待できる。

■実践に向けて

 「ものづくり」の世界一にまで登りつめたトヨタはいかにして達成し得たか。

 私の感覚で言えば、「いつ倒産するかもしれない」という「恐怖感」が根底に常に存在しつづけていることによると感じている。
「改善」とはトヨタにとって「生き続ける」手段である。

 この点、自治体経営に「改善運動」が果たして成り立つのであろうかというのが、私の率直な疑問であった。 しかし、第5章「改善運動のボトルネック」第6章「改善運動のステップアップ」は私の疑問であった「自治体経営の戦略展開の可能性」について、かなり期待を持たせる内容でまとまっているのには感心させられた。

 日本の人口が減ると、全国の地方自治体の維持が難しくなるとの長期推計が出る中、ダメ元でトライする「まず、やってみる」改善が持つ可能性は大きい。元吉氏の今後の活躍を期待したい。

 金田秀治さんプロフィール
http://www.scholar.co.jp/company/process/kaneda.html

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